握られた手にようやく自分も力を入れることができた。
柔らかく細い手に対して、骨っぽくいくらか力強い手。――男と女の違い。
「違うよ姉ちゃん、怒るのは姉ちゃんが、だよ。俺は怒られる方だし謝る方がだ。
お金、財布に入れてくれただろう?っ俺あんなたかり方して!!なのに…くれただろう。
それにごめん、ごめんごめんごめんなさい、あんなこと言うつもりなかったのに…言いたくなかったのに、言った!!ごめん、」
取るに足らない謝罪を、傷を癒せない謝罪を、――姉ちゃんは首を横に振って受け入れてくれる。
決して泣かない姉ちゃんが愛しくて仕方なかった。ひどく優しい人。
本当は今すぐ抱きしめたい。王道なドラマで彼氏がするように、心ごと包み込みたい。
――だけど、それはまだ俺の役目ではないから。
「ありがとう。おかげで楽しかった」
ポッケから財布を出し、残ったお金を姉ちゃんに差し出した。
が、姉ちゃんは手をグーにする。更に渡そうとする金を、逆に俺に握らせようとされた。
――そうして笑顔で言うんだ。
「雅、それは雅のお金だよ。よく言うじゃん、中一は千円、中二は二千円。だから中三の雅は三千円だね!!」
……ほら、優し過ぎる人。



