バカみたいに唇を動かせないでいる俺に代わり、姉ちゃんが言葉を紡ぐ。
「お姉ちゃん、気付かないふりしなきゃ、いけなかった。嫌な思いをさせてごめん、気をつける。ごめんね、分かってたのに……。
あれじゃん…?炊き出しかなんかって、言われたんだよね?お姉ちゃん…
ごめん、ごめん困らせたくなかったのに雅ごめん…」
聞きたくない謝罪をさせてしまっているのは俺――
陰で泣かせているのは俺――
「…っ姉、ちゃん」
まぬけな俺は、大人じゃない俺は、――気の利いた言葉一つ浮かびやしない。
姉ちゃんを子供のように抱きしめてやれる、大人のような余裕がない俺。
それがまだ甘ったれた生き方しかできていない“俺と王子様の差”だ。
王子様ならきっと姉ちゃんを抱きしめて、自分の腕の中で優しく泣かせてやれるのに。
…慰めてあげられるのに。
責めて傷付けて謝らせるのが俺。
―――俺自身の、差。
知りたくもないのに、自らの過ちで知るなんて。やっぱり最高に情けない。



