玄関のドアを軽く押し、隙間から「開けていい?」と言う。
「……うん」
だめだな、俺は待っていた。姉ちゃんがこうして許してくれることを待っていた。
自分から行動せずに、姉ちゃんなら、俺がどうしてほしいのか分かってくれているから。
姉ちゃんなら、どんな俺でも受け入れてくれるから……
――例え平気で姉ちゃんを傷つける最低な弟だとしても。
結局、まだまだガキな俺だ。優しさに甘えるばかり。
――不思議だと思う、姉ちゃんが現われただけで、さっきまでの暗闇は消えるんだ。
玄関前に座り込んだ俺に対して、姉ちゃんは上からにっこりと笑う。
星屑みたい――なんて。
笑顔を縁取る茶色い髪は、夜の明かりを受けて綺麗。
さらさらしてて、姉ちゃんの髪は綺麗だ。手を通したくなる…
髪に触れた手を滑らせ顎をすくい口づけをしたくなる…
独り占めしたくなるから…――
「歩こうか? 眠い?」と言うので、俺は頷いてから首を横に振った。
歩く、眠くないという合図を読み取った姉ちゃんは、にっこりと笑って俺の手をとった。
繋がれた手は家族の繋がり。
外灯より明るく、星よりも輝く。
俺の一筋の光―――



