まあ勇気があれば、自信があれば、…今頃こんな風になっていなかった。
恋に気づいた瞬間、好きだと告白できていたはずだ。単純。
血の繋がらない弟という立場から、とっくに脱却していたはずだ。
――大人じゃないから。
スーツも似合わないし、背もまだ低いし、酒だって飲めないし……まだまだ半人前な俺。
――だから姉ちゃん、待っててほしいんだ。
どうか俺の隣から離れないで、待っててほしい。
俺が力を付けたら全力で姉ちゃんを支えるから。幸せにしてあげるから。
――いっぱい愛してあげるから。
だから――…
そんな日は来るのだろうか?
…なんて、悲観的になりたくない。頑張ればいいんだ。
…けど頑張ったからって報われるのだろうか?
マイナス思考の堂々巡り――とうとう自分で自分が大嫌いになった頃、
「雅」
――トライアングルみたいに可愛らしい姉ちゃんの声がした。



