白は花嫁の色



もうかなり暗い。何時だろうか。暗さに同化した建物を眺めるも、曖昧な境界線はよく見えない。

罪の意識から足取りは重いが、帰る場所は一つだけ。


季節感や情緒を無視した、一年中変わらないコンビニで時間を確認する。

十一時半だった。
…一体何時間現実から逃げていたんだろうか。馬鹿だと認めざる得ない。


爪先の向きは当然我が家だ。俺の帰る場所は姉ちゃんが居るところ。

姉ちゃんと一緒に居ることが当たり前なんだから。


瓦の表面がとっくに剥げくたびれた家の前に佇んだ。


…ドアに手をかけれない。

だって姉ちゃんを傷つけたから、どんな顔をして会えばいいのか分からないんだ。


朝夜逆転生活の姉ちゃんが起きている証拠に、曇りガラスからやんわりと明かりが漏れている。

――それは姉ちゃんの優しさのこもった、幸せの明かり。


――会いたいのに、怖い。

玄関のドアを背に、ぼんやりとしていた。




…謝りたいのに勇気がない。

するべきことは一つで、それん目の前にして踏み出せないなんて、情けないの極み。

ヘタレな自分がつくづく嫌になる。