「あー、きっちーな」「疲れるとか歳だな」「暑くね?夏夏真夏あちぃ」
他の生徒がようやく起き出す時間から始まるバスケ部の朝練を終え、
だらしなく体育館の壁にもたれて下敷きで風を起こす。
まだ夏と呼ぶには早過ぎるのに、少し身体を動かしただけで汗をかくなんて、本当異常気象だと思う。
(…なんて、大きなテーマを考えたりしていないけれど)
見えない風は、輪郭にへばり付いた汗を徐々に冷やしていく。
「クーラー希望」「俺臭ぇかな?」「安心しろ俺のが匂う」
メンバーの中で仲のいい久保と相坂の三人で笑い合う。
朝練組が消えて静かになった体育館には陽気な笑い声が響き、
笑っているうちに、何がおかしかったのか分からなくなることさえ笑える。
――いつもそうだ。
癖のある先生のモノマネとか漫画の話とか、どうでもいいことで大袈裟に笑う毎日。
「悪臭じゃね?」「いやいやフェロモンだろ」
左の脇を上げ顔に近づけて鼻をつまみ匂う仕草をすれば、爆笑。
他の人から見たら意味のない事が、世間一般青春時代の俺らには鉄板ネタ。
友達との笑える時間、最高に充実している毎日だとつくづく実感する。