祈るだけ祈って俯いた。
アーケード下のレンガ風タイルのつなぎ目が確認できるほど、下ばかり見ていた。
来ないで、来ないでくれ、恥をかかせないで、気付かないでくれ……
――そう祈ったのに。
やっぱり神様は居ないんだ。
「雅~偶然!!お友達もこんばんわ!!」
下を向いていた俺の頭に姉ちゃんの弾んだ声が乗っかった。
聞くだけで分かるのに。
俺に偶然会えて姉ちゃんが喜んでくれてるって。
音色に誘導されるように顔を上げれば、にっこりとした俺の大好きな笑顔の姉ちゃんが居た。
きれい、だ。
――――なんて
「姉・ちゃ……ん」
情けないくらい細い小さな声だった。



