視聴覚室のような映画館は暗い。夜道とは違う閉鎖的な黒が視界から色を奪う。

規則正しく並んだ座席や均一のとれた薄い照明、機械的かと思いきやユニークな場内アナウンス。


ここにいることが貧乏人な俺には夢見心地で、しばし頭の中がお花畑だった。


そうこうする間に映画が始まる。
演技派女優の主人公、流行のイケメン俳優の恋人、モデル出身の大根役者で有名なライバル女。


あっという間に二時間は終わっていて、それだけ感情移入できていたんだと思う。

評判どおり面白かった。
ただ、隣に居るのが姉ちゃんならいいのに、と何度となく考えていて…

(だから正確にはあんまり話は覚えていない。ありがちな恋愛話だった、はず)


周りから見たら、俺は本当に重症なシスコンなんだろう。
引かれる位、気持ち悪い男なんだろう。

姉に依存する弟――



…でも、本当は違うんだ。




そこまで じぶんはバカじゃない。