挑発するように吐いた暴言だというのに、結城は途端に柔らかい顔つきになった。
それは姉ちゃんに似た柔らかい表情。
「…大事な女に初めて出会ってね、それは忍なんだけど。
……結婚するなら俺の立場上どっかの株主か資産家の女なんだろうと…諦めて。
それで……雅くんの言う通り。軽率に…。
忍とはこの歳で初恋みたいに……、一生懸命、いまさら恋をして。
証拠は……この先ずっと愛してる、守ってみせる、幸せにすると誓うから…」
幸せそうな笑顔は卑怯だ。
二人の幸せを祝えないなら、悪者でしかないじゃないか。
祝うしかないじゃないか。
…ああ、俺もこんな風に堂々と姉ちゃんを好きな気持ちを声にしたかった。
愛してると言いたかった。
幸せにしてやると言いたかった。
目が合うと微笑み合う、そんな二人になりたかった。
姉ちゃんを好きだと伝えられる結城になりたかった――…
魔法が使えたなら…
欲張りな俺は魔法使いになりたかった。
姉ちゃんが俺に恋するように操りたかった。
俺を好きだと泣きながら言われたかった。
結婚したいと言われたかった。
……違う、結城琴になりたかった。
ずっとずっと傍に居て……俺が幸せにしてやると、なぜ言えなかったんだろうか。
姉ちゃんは俺に愛されなくても、結城に愛される人生を欲しいんだな?
「…良かった。…姉ちゃんの幸せそうな顔は初めて見たから。姉ちゃんは凄く琴さんが好きなんだ」
俺は笑った。
だって、感謝祭で二人は…――
記憶の扉に鍵を差し込む…



