白は花嫁の色


「だからさ?明日姉ちゃん俺の部屋で寝てたらいいよ、俺家に居るし。

茜とか実の面倒見るし、だからゆっくり寝なよ、なー?約束だ」

「そっか…。ありがとう、優しいじゃん?」


必死で取り繕う自分があほらしい。“優しく”なんかないのに。――今傷つけたばっかなのに。

情けない。姉ちゃんはにっこりと大層綺麗に笑うんだ。


気まずくて、ごめんと謝った。

なのに……

「へ?なにが?」と目をぱちぱちさせて、

さも意味が分からないといった仕草をし姉ちゃんは「変なの」と笑う。


―――いつも優しく包んでくれる人。正に絵に描いたような姉。


弁解する時間が欲しいのに、もう工事の前だ…。

どうやら最低な弟には、時間さえ味方してくれやしないらしい。お金で買えるなら時間を止めてしまいたいよ。


「いってらっしゃい」「うん、おやすみ」

いつもの挨拶をして、踵を返す。

――いつもなら姿がなくなるまで見送るのに、今日は今すぐ姉ちゃんの側から逃げ出したかった。


…最悪だ、俺。いまさら意味のない自己嫌悪ってやつだ。

早く金持ちの大人になって…笑わせてあげたい。お金さえあったら…。魔法使いになりたいよ。




帰り道は酷く長い。
暗い闇にはやっぱり光がないと――