白は花嫁の色


よく分かる。
姉ちゃんに気がないなら結城と姉ちゃんは、ただの契約上同意の…関係でしかない。

しかし、姉ちゃんを好きならば愛がいる、きちんと考えなければならなかったんだ。

たまらなかった。
愛してる女は…別の男を愛し愛されているんだ。

だって結城はこんなにも姉ちゃんを愛しているから――


姉ちゃんは愛されて幸せなんだろう。こんなに愛されて幸せだろう。


なのに頭のどこかにいる自分が、“俺の方が愛しているんだ”と主張したくてたまらないんだ。


頷いた結城は、一息ついて「殴って下さい」と、再度頭を下げた。

父さんはぎこちない笑顔で、忍の大事な恋人だからと言った。




――忍の大事な恋人。


俺の夢だった肩書。

忍の大事な恋人と言えば、俺の名前が付いて回るくらいに恋い焦がれたキャッチフレーズ。

姉ちゃんの大事な弟は俺で、忍の大事な恋人は結城。


…どうして世の中上手く行かないのだろう。


女にだらしない王子様は貧乏な百姓娘をお金と引き換えに手に入れた。

心優しい娘はお姫様となり家族を守った。

強引に婚約を済ませた身勝手な王子様との生活。


……このような場合、最後は“あなただった”と俺の元にお姫様は戻ってくるはずだろう?

貧乏に逆戻りしても、永遠の愛があるならめでたしめでたし……そうだろう?