白は花嫁の色


父さんは立上がり結城の首を掴んだ。

―――のは、ほんの一瞬。結城は膝から崩れ落ちた。父さんが結城の腹を殴ったのだ。


おかしい、掘やら相坂たちやら父さんやら…俺はやたら殴られ過ぎだし、

目撃もするなんて暴行ネタが短期間で多発し過ぎだ。


何かがおかしい。
どうしてチープな物語のような展開に俺が巻き込まれているのだろうか。


平凡に姉ちゃんと過ごしたいだけなのに――…


父さんの手は震えている…

立ち上がった結城は歯を食いしばると、腕を後ろで組んだ。

そして「気が済むまで殴って下さい、僕は娘さんを傷つけましたから」と頭を下げる。



――ああ、愛が目に見えるならば、きっとこれが愛なのかもしれない。


そんなことを思ったんだ。

好きな女を手に入れるにはプライドさえ捨てる…



父さんは腰を曲げ、娘一人守れなかった自分の代わりに結城が守ってやってくれと柔らかな口調で告げた。

そして、婚約させた時点で……分かっていた、と。

最後に「忍を好きなら話は別なんだ、分かるよな…?」と続けた。



言葉の一つ一つが痛かった。

また泣きそうになるので、奥歯を噛んだ。どうして俺はすぐ涙がこぼれるのだろうか。