待ってくれ。
愛していると俺は一度も伝えられなくなるのか?
俺ではなく結城が姉ちゃんを愛する資格を手に入れるのか?
――そんなの嫌だ。
心の底から姉ちゃんの幸せなんか願えない。
だけど現実から逃げたらいけない。
…俺はあえて結城を目に入れた。
穏やかな光の粒が窓から注がれる。ちょうど日なたぼっこしながらお花摘みを楽しむ気候――
「琴くん。私は婚約の話を頂いた時、工場のため家族を守るためお金の為に娘を売ったような親だ。
あなたは“取引先”だった。忍一人より兄弟四人、借金のあて、従業員をとった」
父さんの言葉は、後悔ばかりで―――
俺が尋ねた時には感じられなかった位に、父親らしくて…
やはり父親なのだと感じるには十分だった。



