白は花嫁の色


「婚約を条件に断れないのを計算して手に入れようとしました。
簡単に忍さんは手に入りました」

結城は父さん母さん俺、俺母さん父さん、と視線を順に動かしながらしっかりとした口調で告げる。

姉ちゃんを買ったって自覚…していたんだな。意外だった。

姉ちゃんを、家族を見捨てた母さん。家族を想い、姉ちゃんを売った父さん。

――姉ちゃんを買った結城と、見ているだけだった俺。

忍という人間を取り巻く人間は、皆姉ちゃんを幸せにしたいと思っているのだろうか。


姉ちゃんを見捨てて自由を奪った母さん、姉ちゃんを売って悲しませた父さん、

姉ちゃんを買って傷付けた結城、姉ちゃんを好きなだけで泣かせた俺。

一体、四人集まってなにをしているのだろうか。

――重要な中心人物が居ない。


ドーナツみたいに真ん中がくり抜け。ドーナツから覗く先に何がある。

子供のように穴を覗くだけでは笑えない。

炭水化物、油で揚げた高カロリーな甘いもの……