*
姉ちゃんは綺麗だった。
結城の横で幸せそうだった。
姉ちゃんの未来は幸せなのだろうか。
わざわざ聞かなくても、いちいち俺なんかが心配しなくても、―――姉ちゃんは幸せそうだった。
それが全てを、
この絵本がハッピーエンドなのだと語っている。
渡せなかったプレゼント。
プレゼントを渡したかった、食事をしてケーキ囲って…“おめでとう”って言えたなら…
ずっと楽しみだったんだ。
十六歳は女の子がお姫様になれる年齢…
姉ちゃんにプレゼントを渡したら、どんな顔するんだろうって…
だけど、お姫様は本物の王子様からたくさんのプレゼントを貰っていた…
だからいくら俺が頑張ったって、きっと、…今日見た笑顔には劣るんだろう。
姉ちゃんの一番この世で美しい笑顔は、結城でしか作れない。
それは俺の役目ではない。
……姉ちゃん、好きだよ。
好きだ好きだ好きだ。
好きだと、言われたかった。
あなたの声で。
一言で良かった。
好きだと、それだけで俺は幸せになれるんだ。
―――ずっと姉ちゃんを幸せにしたくて。
のぞみが叶うんだ。
王子様が姉ちゃんを幸せにしてくれるなら―――
のぞみは結城にたくしたらいい。