自分の体に命令して涙を飲み込む。それは強がりなのか弱さなのか分からない。
「なんでだよ、俺、姉ちゃんが姉ちゃんじゃなくなって……嫌だよ、ずっと家に居てよ…」
姉ちゃんは家族のために婚約をして、全てを捧げて、…姉ちゃんには幸せになってほしいのに。
好きな女を幸せにすることが、数年後に大人になった俺の生き甲斐になるはずで…
「え…」
その小さな声を、俺のそばで一生投げかけてくれたらいい。
姉ちゃんを幸せにするのは俺の役目なんだよ。
俺と姉ちゃんの物語に割り込まないでくれ…
姉ちゃんが光の国のお姫様なら、俺はどこの国のなんなんだ?
……少なくとも王子様なんかじゃない。自分の生まれも分からない。
―――白馬に乗っているのは結城。
「なあ琴さん、姉ちゃんを諦めてくれませんか。姉ちゃんは下手な料理を俺たちの為に自信いっぱいに作るんだ、味覚音痴な妻なんか嫌だろ?
下手なミシン掛けしてダサい服をリメイクするんだ、やばいだろ?何時代だよ?なあ…分かるだろ?
恥を凌いで店に残飯を貰いに行くんだ、あだ名は炊き出し、シャー芯。
俺たちのためだ、全て全て犠牲にして…なあ、琴さん…婚約なんて、もう…
俺姉ちゃんがこれ以上犠牲になるのは見てられない。見たくない。…姉ちゃんばっかり可哀相だ…
あんたは我が儘な大人だ」
泣いてた。
泣くつもりなかったのに。…泣いたらダメなのに。
泣いてしまったら王子様失格なのに…



