絶対俺の方を見てくれているのに、あえて夜空を見ながら話し始めた。
前を見ないと危ないと注意されたが、聞こえてないフリをして。
「明日部活の後みーんなで遊ぶんだってー」
「雅も行くの?」
ふわりとした声は心地よくて、いつまでも聞いて居たいのに自らかき消していた。
「ううん、だって映画にランチらしいよ?行かないよ?つか行けないじゃん?アハハ」
「へえー、ランチとかOLさんだねー」
――やっぱり冗談で返された。……少し本音を交えたのに。
皆は遊んでいるのに…
交渉不成立。ため息混じりにちらりと姉ちゃんを横目に見た。
何を言っても姉ちゃんなら、くったくなく笑ってくれていると。
…思い込んでいたのが間違いだった。
眉間にすごく深い皺が刻まれ、唇を噛んでいて――
――笑ってなんかいやしない。
つらそうな顔をした 姉ちゃんがいた。
「あ……」
俺は、何を言ったんだろう……?
ひやりと繋いだ手の平から一気に熱が消えた。全身が痺れたように。
ピンク色をした淡い恋心は悲しみに青白く染まる―――



