「忍さんを下さい」
おかしなことを言う。
姉ちゃんへと視線を移すと、大きな瞳から涙が流れるところだった。
姉ちゃんのこんな泣き顔なんか見た事なんてなかった。
…だって姉ちゃんは長女で…泣かないから。
綺麗な泣き顔で、思わず見惚れそうになる。
だからきれいな顔をして、
姉ちゃんが俺を…
真正面から残虐に切り裂くなんてしないはずだ――
姉ちゃんが俺を悲しませることなんてしないはずだ―――
「あの…私、琴さんが大好きです、初恋です。私琴さんを支えられるようになりますから…私…琴さんのお嫁さんになりたいです」
だから―――
どうして。
久々に聞いた可愛い鈴みたいな声が、耳から体の中へと届く。
心に辿り着くその声は、心の中をぐちゃぐちゃにする。
そして体から生きる希望を消し去る。
どうして…?



