一人になれば笑顔を剥ぐ。
家族や友達が居ない時に笑うことはない。笑う必要がない。
……そんな時、自分はどんな顔をしているのか時々怖くなる。
―――笑えない闇にひとりぼっちだから。
暗闇の奥底をさまようばかり。
家族を恨む権利はないが、やっぱり貧乏な生まれは恨みたくなる。
友達に遠慮させてしまうし、欲しいもんも買えないし、腹も減る。
常に我慢して生きてかなきゃいけない。
――貧乏は選択肢がなくなる。お金がないと欲しいものが手に入らない。
例えば甘いケーキが食べたくても、俺が選べるのはせいぜいホットケーキだ。
…量があるし安い。
惨めだとは思う。
だけど、俺なんかが贅沢する立場じゃないと分かっている。
辺りはすっかり夜に包まれていた。自転車のライトが色をつける世界。
――この光が示す先には何があるのだろうか。
たった数メートル先しか照らせない。目的の場所など見えない。
実際どこに向かって進んでいるのか分からなくなる。
真っ暗な中、俺にとっての光はいつも――



