――結城は姉ちゃんの手を振り払って、顔は見えないけれど別の女の人と歩いて消えた。
姉ちゃんは泣いていた。
明らかに夢だけど、俺は泣きやまそうと近付いた。
――けど姉ちゃんは俺の手を取らずに、結城を追いかけていった。
結城は振り返らないのに、姉ちゃんは走って追いかけていくの?
なんでそっちの手を選ぶの?
突っ立ったままの俺の手は、寂しい手だった。
―――ゆ、め…?
本当に夢なのか?…嫌な夢?正夢?
――…“結城の息子は節操なし”というフレーズが頭から離れなかった。
…正夢にならないことを祈る俺はおかしい。
結城が他の女に行って姉ちゃんをポイ捨てするなら、正夢になったなら…俺には転機なはずなのに。
だけど俺は姉ちゃんの笑った顔が好きだから、泣いた姉ちゃんは見たくない。
好きなのに、自分の気持ちがよく分からない。
ただ姉ちゃんを笑わせるのは結城ではなく俺の役割だから――



