つまり姉ちゃんが結城のオンナだと…知れ渡っていくのだろう。
…それは俺の夢だった。近所で有名なおしどり夫婦、は―――
姉ちゃんの旦那として紹介されるのは――…
「婚約だよ、まだ結婚してない」と、肩を竦め笑ってみせた。
なのに二人は下を向き「…ごめんな市井」、なんて謝る。
相坂が真一文字に唇を張り、しばらくして ゆっくりとそれをゆるめた。
「…部活辞めたり、学校来てもぼんやりしてたり……俺何も知らないのにお前にキレたりなんかして。
雅さ、姉ちゃんっ子だったしさ、そりゃあの結城なら…家も色々大変なんだろう?」
「…相坂」
何も言えない。頭ん中が固まったみたいだ。
ずっとずっと姉ちゃんのことしか考えてなかった気がする。
友達気取りでつるんでいた癖に、俺は二人のことなんか真剣に考えたことなんてなかった。
姉ちゃんのことしか考えていなかった。
…つくづく自分は最低な人間だと思う。



