「……久保、相坂」
声に振り向いたら二人が居た。
…今更なんだろう。バイト代を返せと言うのだろうか。
……。
それなら結城の金を返せばいい。
あるいは堀のことだろうか。
…この件は俺に全く非はない。むしろ手を出さなかったのだから褒められるべきだ。
溜め息混じりに、俺は腕を組みその場に足を止める。
――体育館は青春臭い。
久保が最初に足を動かす。相坂は曖昧に笑い俺はそれに続く。
中庭へ向かう。
自然と足並みがそろうのは、三人の呼吸が合っているからだろう。
黙ったままでいると、相坂が口火を切った。
「雅、お前ん家姉ちゃんが結婚したんだって?」
どうして?、そう聞こうとする前に、
「有名だよ、近所のババらが」
「商店街とかも持ち切りだ」
と説明された。
「…そうなんだ。」
姉ちゃんは美人で有名だったから…そっか、知れ渡ってんだ。
ならば相手が“結城”だと既に噂されているのだろう。
考えるだけでズキズキと胸が痛い。いいや、あの日から俺の心はずっと鈍く痛んできっと腐りかけてんだ。



