白は花嫁の色


――貧乏って嫌だ。
自分だけなら我慢すればいいけれど、友達に無駄な気を使わせてしまうのは申し訳ない。


がらがらと店の戸を引く音がやけに響く。
明るさが増す度に、焼き魚の美味しそうな香りが一緒に運ばれてくる。


「久保は行けよ」と言うのに、「行かねー相坂のおもりさせんなよ」と曖昧に笑うだけ。

…そっちがそう出るなら、俺にも切り札がある。


少し目尻を上げ、まるで好きな子をからかう小学生のように微笑んでみせた。


「お前さ遠藤の事好きだろう?」

「は!?」

「つきつめれば相坂は宮田だ!Wデートじゃん「市井!!何カンチガイしてんだよてめぇ!!」


今度こそ正真正銘久保はいつもの久保に戻った。

真っ赤な耳をしてただのあほな友達の久保。遠藤のことが好きな久保。

これでさっきの気まずさはナシだ。俺らは俺らのまま、だ。


「またな!おやすみ」

「違うからな!絶対に!!おやすみ」

否定すればするだけ好きだと言っているようなものを、違うと言い張る。

そんな親友に笑顔を残して自転車を進めた。


憎らしい感情は綺麗さっぱり闇の中に消えたんだから――