白は花嫁の色


「俺さ、ご存知のように金ないんだわ」

気まずくならないように大袈裟に笑ってみせた。

が、何を思ったのか久保は満面の笑みで、「だったら給料があるじゃん、四日分の」と、提案してきた。


名案だとばかりに微笑む久保に悪気がないのは分かっている。

…だからこそ困る。


夜空よりも黒い色をした襟足を首から前へと引っ張った。
さらさらした――姉ちゃんによく似た髪質の…。

涼しい風が髪を根本からすくっていく。


「ん――っと、働いた金は遊び…とか、に、使いたくないんだ、俺の金じゃなく「へ?じゃあ何に使うんだよ?」

食い気味に来られて、本当は腹が立つ―――けど。働かせてもらっているんだ。


「うち貧乏じゃん?働くのは父上と姉上だけとか可哀想だなーとか。良心があるんですよね、俺にも」

ハハハと笑うのに、久保は笑わない。しまったと言ったように険しい顔をする。

その顔が嫌なんだ。


けれど、すぐさま「そっか、うん、俺断っとくわ、正直俺もだりくて。

土曜くらい相坂の相手したくねぇし、昼寝してぇからな~秘密な?」と悪戯に笑う。


そこにはもう同情の色はない。

――優しい色を感じると、憎しみが薄れて行く。

だから俺も笑った。