「姉ちゃんに説教される筋合いねぇよ、姉ちゃんだって金で婚約者と寝てるくせに」
お金はなくても話すだけならタダで笑わせてあげられるから。
俺は話すのが得意じゃないが、姉ちゃんが笑顔になるからお喋りが好きだった。
――俺の声は姉ちゃんを幸せにするために存在していたのに。
俺はそれを破っていた。
――本当は否定してほしくて言った。
婚約者と寝ているという発言を否定してほしかった。
なのに……
「ーー…おやすみ」と姉ちゃんは言う。
――――それは肯定だ。
ああ…
本当に本当に本当に、本当に、本当に姉ちゃんは…――
…どこかで願っていた。
姉ちゃんはまだまっさらだって、真っ白だって。
姉ちゃんは姉ちゃんのままだって――…
…違うんだ。
ありえない。
まだ告白だってしていない。まだプレゼントだって渡していない。
まだ…王子様にだってなれていない。



