しばらく放心していた。まだ信じられなくて、机の上に置きっぱなしだった携帯電話で父さんに電話をした。
「父さんっあの、っ、その……父さん」
姉ちゃんが帰ってきたと言いたいのに言葉が繋げない。回らない舌を必死で動かす。
まだ何も話せていないのに受話器越しに、ふっと優しい漏れた笑いが耳に入った。
姉ちゃんを俺が守れるのだと認めてくれたのだろうか。
淡い期待に胸が緩やかに膨らんでいく。
『忍はな、一日泊まるらしい』
「え?」
『……忍は一泊家に泊まるんだと』
「………。」
姉ちゃんは、泊まるんだ?……なんだ、泊まるだけなのか。
てっきり婚約破棄されたのだと思っていたのに。出戻りしたんだと……違うのか。
泊まるだけなんだ……なんだ、そっか。姉ちゃんは結城のモノなのか。
結城に捨てられたのかと思ったのに…
世の中、甘くないな。



