―――部屋をノックすると音がして。
「雅ーー入るね」と聞きたくて仕方なかった人の声がして。
空耳なのだろうか。禁断症状で幻聴が聞こえるのだろうか。
姉ちゃん?なんで?そんな訳がない。
……姉ちゃんの声を聞き間違えるはずがなく、……こんなにも俺の耳に馴染む音はないのだから。
嘘だ、姉ちゃん?
―――姉ちゃんだ!!!
待てよ、俺は何しようとしてんだ?下に居る女はなんなんだ?
てか、植木って誰だよ。
動揺して固まった。
早く気色が悪い女から離れなきゃと思うのに、動くことができない。
無情にもドアが開く。それさえ結城の嫌がらせに思えた。
「んだよ!!勝手に入んな」
姉ちゃん、数か月振りの、顔。姿、声。その目は驚きと―――――軽蔑、だ。



