白は花嫁の色

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とにかく忙しかった。金曜日だったからだろう、工場の団体客が結構多かったように思う。

手首にくるビールのジョッキ運んでも運んでもどんどん注文が来て、

そう思えば運びにくい大皿料理の注文がわんさか来て、

この辺りに安い飲み屋がないせいもあり、せわしないオーダーの嵐に、たった一時間でも目が回る思いだ。



「お疲れ、ありがとうな」
「ん、じゃあ変質者に間違われないように帰れよ」

黒い空に浮かぶ月は白くて綺麗。
ぼやける彩度と夜風が絡み合って、幻想的でロマンチックな気分になる。

自転車に跨り、ばいばいと手を振ろうと振り返ると……


「明日さ、土曜じゃん?
昨日も遊んだけどやっぱ市井も居なきゃつまんねーし。

土曜なら部活昼までだろ。相坂から遠藤とか宮田とかと遊ぼうってメール来てて」


「あー…」

またその話、だ。

すぐに頷かない俺に対して、久保は「みんなで昼飯食って映画行かね?一位なだけあって楽しいらしいぜ」と、笑顔を向ける。


そりゃあそうだ。
皆でわいわい昼飯食って映画見て、どっかファストフードでお喋りして…楽しいに決まってる。


………でも