「うわあーむかつくんですけど!!髪だけ?なの!?腹立つ~」
テーブルを挟んで、わざと怒ったふりをした満面の笑みを浮かべる姉ちゃんが居た。
……単純にほっとする。
カラ元気でも、辛そうな顔をさせたくないんだ。
「うわーー怒るとか!!じゃあ姉ちゃん顔もイケてると思ってた訳?いやいやいや、何、そっちのが怖いんすけど」
「アハハうっざーなにそれ!!」
――笑ってくれたらいい。お金もない俺だけど話すくらいはできるから。
少しでも姉ちゃんの幸せの役に立てるのなら、俺は幸せだ。
「困るよ、自意識過剰な姉を持つと」と言えば、
絶妙な間で「無礼な弟を持つほうが悲惨、アハハ」と返って来るから…。
この空気が好きだ。
平和でのどかで穏やかな日常が、何よりも大事。
友達と遊ばなくっても、俺は姉ちゃんが居るから幸せだ。
…気持ち悪いシスコンだとバカにされるかもしれない。
彼女を作れない自分はバカだと、自分でもよく思う。
――でも、幸せの形って人それぞれってよく言うから。
誰に何を言われようが、俺の幸せはいつまでも変わらない――…



