「……堀?」
部屋には堀が居座っていた。オレンジジュースを手持ちぶたさに弄りながら。
変に梳いてある長い茶色の髪が制服にかかっている。
「あっ、市井!ごめん」
俺に気付くと堀は頬を染める。
後ろ手にドアを閉めた。堀と目が合う。
相変わらずがたがたのアイラインの黒い目、だまになったマスカラの汚い睫毛、B級ホラー映画のメイクみたいだ。
「…何、」
この部屋に初めて入れるのが堀だなんて腹立たしい。これ以上無駄に苛々させないで欲しい。ストレスを増やさせないで欲しい。
「いや、あの市井…元気ないからさ、うん」
「…ふうん、何、慰めてくれようと?」
床に座って居る掘を挑発的に見下ろした。
根元が伸び黒くなっていて不格好だ。
――――無言。
不気味なくらいの沈黙だ。
なるほど、掘は本当にホラー映画の演出をしているらしい。



