白は花嫁の色


「お前にいつ忍が押し倒されるのか、本当はずっと心配だったんだ。

雅より結城ん坊ちゃんの方が忍は幸せだろう。金持ちで働いている立派な大人に忍が貰われるなら、そっちのが父さんはよっぽど良かった。幸せだ」



涙が、なぜ流れるのだろうか。ぐちゃぐちゃだ。

泣かない決意は崩壊し、床に水溜まりを作る、フローリングの溝に涙が落ちていく。

ばかか。俺はばかか。目の前がぼやぼやで見えない。もう何もかも嫌だ。

逃げるように、階段を駆け上がっていた。



なんだよ、なあ…なんなんだよっ俺は…、

父さんに、俺そんな風に見られてた…のか。


「ハハッ…は、」
乾いた笑いが響く。


俺の方が危険…そうかもな。
俺が頑張って勉強したって結城より金持ちにはなれない、そうだよな。

その通りだ。
姉ちゃんだってちまちま働くより…贅沢させてくれる大人の男を選ぶだろうに。


「……バカだ…」

父さんからしたら俺は盛りのついた狼だったんだ。信用されてもない。


――当たり前か?
俺は姉ちゃんが好きだったから。

受験を頑張ったって、良い大学に入ったって、良い会社に入ったって…たかが知れている。

肩書だって生まれだって容姿だって…何もかも俺は結城以下だ。


何より父さんに信頼されていなかったんだとショックだった。

お前はうちの子じゃないと言われるより――ショックだった。



窓から月の光りが注がれる。……夜になると姉ちゃんとたくさん話をしたのはもう昔で…

俺は…何もしてやれなかった。悔しい。悔しい。
悔しい――

それだけだ。

――
――――