「雅、忍なら幸せに暮らしてるから、お金だって十分にあるから」
まるで子守唄を歌うようにひどく優しい声で言う。
一方俺は雑音に値する声を出した。
「金があれば母さんは姉ちゃんが売られても姉ちゃんは平気だと思ってるの?!体を犠牲にしても姉ちゃんは平気だと思ってるのか?!
おかしいだろっ、おかしいじゃないか!!そんなん母さんは姉ちゃんが幸せだと思うのかよ?!
愛がないじゃないか!!そんなお人形にしたくないよ!!姉ちゃんを返してくれよ!!」
膝が震える。
二人の座る質の良いソファ。二人の奥にはおっきなTV、二人の左には最先端のPC。―――必要だったのか?
俺たちにこんな暮らしが必要だったのか?
僅かに微笑んだ母さんを睨むしかできない。
「雅、忍が本当に不幸だと思う?忍は高校に行かずに…家事に追われてオシャレもできずに…母さんが言える立場じゃないけど。
琴さんは忍には家事をさせない、金に困らせない、贅沢をさせてやるって。
ねえ雅、それでも忍は不幸なの?お金にゆとりがあることも素敵じゃないの?一番雅が分かっているんじゃないの?」



