俺を見ているんじゃない、自分の“担任として有名進学高校に送り出す評価”を見ているんだ。
「悩みはあります、でも先生に言っても解決しません」
「悩みなんて頑張れば状況は変わるんだから諦めないで」
力説する担任の目の中から俺に対する親身な気持ちは伺えない。
勉強も部活もしないなら、俺はいよいよ誰からも必要とされないのだろう。
「頑張ったって立場や身分には敵わない、社会はそういうもんだ」
吐き捨てるように言った。
そう、家は結城を前にしたらＹＥＳしか言えない。ＮＯはない。
頑張ったって何もならない。支援を切られて終わりだ。
姉ちゃんにＮＯはなくて…
だから…
「市井、先生期待してるんだから、市井は成績常にトップ三に入るんだから。どうしたの？市井ならいい大学にも入れるのよ、奨学生にもなれるに、将来いい会社に入れるじゃない」
「……俺、将来とかどうでもいいです」
成績が良いと姉ちゃんが喜んでくれるから勉強しただけで。
次第にいい高校に入っていい大学に入って、いい会社で働いて姉ちゃんを嫁にして、幸せにしてやるって……
そんな人生設計をしていた。
…だけど、
姉ちゃんが結城のモノになった今、俺が勉強をする意味すらない。
姉ちゃんと兄弟だということでしか関係がないから…
