「市井、どうしたの?中間テスト…白紙だなんて」
内申に響く中間テストを棒に振ったから気に食わないのだろう。
「どうしたの?」
黙っている生徒に少し苛立ったらしく、先程より荒くなった口調に、俺は聞こえないよう舌打ちをした。
「別に」と零せば、被らせて「受験生なんだから内申に響くわ!」と必死に訴えられた。
心配するフリをして結局は内申だ。笑いたくなる。
「俺、高校行かないんで」
「どうして?西高校行くって…推薦をって…言ってたじゃない」
「行きません」
強く言った。西高校は姉ちゃんが言うから行こうと思っただけだ。姉ちゃんが居ないなら…行く意味はない。
特待生になったにしろ、進学すればおのずと金銭面に迷惑かかるから行く必要がない。
結城の世話になるくらいなら、働くべきだ。
「ちょっとあなたどうしたの?!お父さんは知ってるの!?」
「さあ…」
「さあって市井っ、悩みがあるの?先生に話してみて?」
担任は眼鏡の奥から一生懸命に俺を見つめてくる。あまりの眼力に、石にされるのではと身震いした。
…とんだ茶番だと思った。



