白は花嫁の色


「でもそれじゃあ……」

そこまで言って決定的な一言が言えない。言葉を濁して下を向いた。

機械が止まり、痛いくらいの静寂が体を包み込む。
ゆっくりと唇に乗せるのは呪いの歌。

「忍は贅沢ができるんだ、なんせ未来の社長婦人だ。好きなもんをなんでも買えるし、旨いもんが食え「っ愛は?!愛がない!!!」

狂ったみたいに叫んだ。
工場の壁に吸収されない大声が跳ね返って俺の心臓に突き刺さる。

自分で自分を殺しているみたいで可笑しかった。


愛がない。俺がこんなに姉ちゃんを好きな、愛が。愛なんて結城と姉ちゃんにはないじゃないか。

また父さんを殴りそうになる衝動を抑え、強く奥歯を噛んだ。怒りで歯が砕けるならそれで構わないと思う。


「…忍は見初められただけ幸せ者だ。あそこの坊ちゃんは格好良いらしいぞ、ハンサ「でも評判が悪い!!ろくな奴じゃない!!」


「うちで暮らすよりのびのびできる」


…ああ、父さんの目は何を見てるんだろうか。少なくとも…姉ちゃんを見てないじゃないか。

すんなりと婚約を受け入れている。どうして?なんでだよ?取りやめてほしい。


長男らしさだとか、理性だとか、そんなしがらみが吹っ飛んだ俺はとうとう叫んでいた。