「父さんさ、なんで姉ちゃんを売ったの?……どうして?正気か?」
「資金援助してくれる、もはや脅しのようなもんだ」
そう言われたら、仕方がないと受け入れるしかない現状だという事は、嫌なくらい知っている。
ローンの…貸し渋りに頭を抱えていたことくらい知っていたんだ。
でも俺は父さんが婚約を破棄することを促すために口を開いた。
それは父さんを呪う言葉だと分かっていたけれど―――
「結城琴って女癖相当悪いらしいよ。結構な遊び人らしいよ。節操なしって噂されてるような男なんだよ?いいの?」
縋るように見つめたまま、正面に立った。
どうか、どうか今ならまだ取り返せるから―――父さん次第だ。
「知ってる。忍は美人でスタイルがいいし可愛らしいし、…気に入ったんだろ。どこでどう忍を知ったのか……ちょうど良いじゃないか」
たいしたことじゃないと言った物言いをする中年男性は、こんなに肩が頼りなかっただろうか。
それとも、もう何年も弱々しかったのだろうか。
「っそんなの!!そんな…おかしい!!」
ちょうど良い、だなんて。耳を疑う。仮にも実親のくせに無責任ではないか。
呆然としていたら、何を機に開き直ったのか「忍を売ったんだ」と力強く言う。
そう、父親の威厳を持って―――



