姉ちゃんが居なくなった一人の帰り道は、すごく暗い。すごく長い。
月の明かりも夜のしんとした空気も、何も変わっていやしないのに景色が違う。
真っ暗闇――
――姉ちゃんは分かってない。
単に犯罪を予防する為に、こうして送っている訳ではないのだ。
……姉ちゃんと話したいから、俺はこうして送っているんだ。
黒の濃い帰り道、きっとそれは闇を照らす姉ちゃんが居ないから。
中学の頃姉ちゃんは朝刊配りをしていたので、俺も入学早々すると言った。
そうしたら姉ちゃんは、「部活してくれたほうが嬉しい」と言った。
だから俺は好きでもないけど、得意だったバスケ部に入った。
それ以来、姉ちゃんに褒められたくてバスケを頑張っている。
得点王と言われるくらいに。…頑張ったら姉ちゃんが喜んでくれるからだ。
きっと、いや絶対姉ちゃんは、自分の影響力を分かってない。
――でも、少しは分かってる?
姉ちゃんだって分かってるはずだ。
――お金があったら楽になるんだってことを…。
実際問題、金は重要だ。バスケをしたからって家にお金は入らない。
消費するばかりで、お金は湧いて出やしないのだ。木を揺らしてもお金は落ちてこない、それが現実だ。