白は花嫁の色


風呂に入れて寝かし付ける。

いつも姉ちゃんはこんな風に生きてたんだ。本当に母親だ。忍としての人間は存在しなかったんだと実感する。

そして、俺自身が忍として何ひとつ笑わせてやれていなかったんだと痛感した。


姉ちゃんは幸せだったんだろうか。
普通の生活なら女子高生をして遊んでオシャレをして…恋愛だってしていただろうに。

間違っても“工場と引き替えに婚約”なんてせずに済んだだろうに。



九時三十五分。――外に出た。

月の光りが妙に明るい。
つい先日まで姉ちゃんと歩いた道に、今はもう隣りに美しい笑顔をした姉ちゃんは居ない。一人だ。

俺の幸せは根こそぎなくなったんだ。黒く塗り潰されて、もうどんな色だったかなんて分からない。



姉ちゃんは誰もが振り返る美人だ。結城琴が目を付けたのかもしれない。金をちらつかせ買ったんだ。

やっぱり許せない。非常識だ。



怒り任せに父さんに話をつけに向かった。

寂れた工場、侘しい機械音、弱々しく壁越しに聞こえる外の音。

いつものように父さんは機械を動かしていた。向上心の象徴、試作品を手にして。