白は花嫁の色


屈辱だ。姉ちゃんを侮辱されたんだ。

百歩譲って結城の素性話は、もしかしたらヒガミからの嘘でっちあげなのかもしれない。本当は女に誠実な人なのかもしれない。

だが、そんな噂が上がるくらいだ。…結城は評判が良くないし人望だってないのだろう。

現に三人組は結城を嫌悪している様子が言葉の端々に見て取れた。


…そんな奴に姉ちゃんをやれない。やりたくない。姉ちゃんはどこに居るんだろうか、早く連れ戻さなければ噂が真実なら悪夢でしかない。




怠くて重たくて何より精神的に疲れていたのだろう…

家に帰った俺は崩れるように眠りについた。深い眠りは現実逃避には適していた。






「…兄ちゃん、兄ちゃんお腹減った」

愚図ついた声が耳の中から目を覚まさせる。夜の七時で、徹夜明けのように体がだるく、たくさん眠ったのに休んだ気がしなかった。


「ごめん、今から作るわ」

現実なんだなと思う。これから先、俺が姉ちゃんの役目を担うんだ。

――家事はいいから雅は勉強して――

姉ちゃんの台詞が浮かぶ。


…姉ちゃんは自分で料理するっつったんじゃん、俺宿題してねんだよ?だから帰ってきてくれよ。

……なんて、ばかみたいだ。そんな台詞を言えるなら吐き出してしまいたい。


料理をする姉ちゃんの後ろ姿を眺めるのが好きだった…背中を泳ぐリボンが可愛くて…

姉ちゃんは居ない。
そんな訳ないと思いたいけれど、もう子供ではないのだから残像を追うのではなく現実を見なければいけない。

卵焼きとモヤシを炒めたもの、ご飯と、蒲鉾のマヨネーズで焼いただけの食器を並べた。

メインがないな、と失笑しながら。


そう、姉ちゃんが居ない。家族の中心が――俺の人生の主役が居ない。