まずはアポがどうこう説明を始めた女の声を遮り、厄介者だと承知していたが俺は叫んだ。
「うるせえなあ!!結城の子供はどこだよ!!呼んでこいって!!なあ?!聞いてんだから答えろや!!」
カウンターに身を乗せ、キスする勢いの距離で怒鳴っていた。
恥じる必要なんかない、無力な俺ができる唯一の姉ちゃんを守る術は大声なのだから。
――けれど、呆気なく体格の良い警備員に追い出されてしまった。
暴れても無駄で――
なんなんだよ、これは。なんでだよ、なんでなんだよ。婚約者に会わせろ…ふざけんな!!
追い出されたからって諦めない。諦めたら終わりだ。絶対に諦めてなんかやらない。金をつまれたって諦めない。
オフィス街で一番高い会社の前で蹲る。
成す術もなくしばらくそうしていたら、昼休みなのか、結城のパスケースを首からぶら下げた社員がうろうろし始めた。
そもそも婚約者はここで働いているのだろうか。
衝動的にここに来ただけで、でもだからって今更迷ってる暇なんかない。
こうなったら自分の特権を最大限に生かすしかないと、財布とポーチを持った女に話し掛けることにした。



