白は花嫁の色


とりあえず、結城のでかい会社の前に着いた。

必要以上に縦に長い。モダンな造りからして“金の亡者”だと主張しており、溜め息混じりに見上げた。


太陽が反射する窓ひとつとっても、入口へのアプローチひとつとっても、

金による――人件費をきっちり使っている手入れの行き通り具合が伺える。


従業員全員が誇り高く勤めていると分かる外観に場違いだと出鼻をくじかれるも、震える足で受付に向かった。

目をぱっちり開いた女は機械的な(それでいて爽やかな)笑みを向ける。

制服の着方とか化粧の仕方とか、いちいち“完璧”だ。


「あの、結城の息子に会いたいんですけど」

突拍子もない発言をする男を見る目は、どこかバカにするような色をしている。

隣りで受付をしているサラリーマンと俺では、ちっとも対応が違うじゃないか。

――教育に問題があるんじゃないのか。

そんな事を頭で冷静に考えるも、心はすっかり取り乱していた。

「婚約したんだろ、知ってんだよ!!会わせろって!!会わせろや!むしろ今すぐここに連れて来いよ!!」

静かなフロアには惨めな弱い声が情けなく響く。

好奇の目も非難の目もない。見て見ぬフリをするのが大人なのだろうか。

けれど子供の俺は姉ちゃんを見て見ぬフリなんかできない。