白は花嫁の色


通常通り兄弟は学校に行き、俺は風呂に入った。嫌な気持ちを洗い流したかった。

ちっとも眠くない。
もし眠ったら眠り姫になってしまいそうだから…姉ちゃんに口づけをしてもらうまで死んだように眠れたら――


「相手、誰」と、無言の父さんに何度も何度も誰かと聞いた。

三十八回目の「誰」に、ようやく父さんは「…結城だ、結城の息子」と言った。



「っ…は?、

え、!―――っ、あの?」


喉の穴が詰まったのか、掠れたおかしな声が漏れた。

結城…
今の時代…結城といえば――頭に浮かんだのは“あの”結城――

「そうだ、あの結城「なんで、そんな人が、姉ちゃん…?へ…なん、で…」

あの結城は…就職したい企業ランキング一位で、実績も将来性もある会社。関連本はどこの本屋でも決まってビジネス書籍コーナーで平台に積まれているくらいだ。

つまり、結城の息子とは大金持ちの社長の息子。



「……姉ちゃん…どこに居るの?」

「……」
それ以上は父さんは口を割らないつもりらしい。

結城の会社はうちの工場の遥か彼方のてっぺんだ。

いくら関連しているとは言え、そんな会社の偉い奴が、なぜ一般市民と結婚したがるのだろうか。


意味が分からない現実の中に突き落とされた。きっともがけばもがく程墜ちて行くのだろう――それだけは分かった。