現実から逃げたくて一目散に工場から去った。
風呂でのぼせた時のように骨がなくなった体はふらふらする。
でたらめで嘘で間違いのはずだ。
姉ちゃんが取引先に婚約者として連れてかれるなんて…そんな時代錯誤ありえない。
工場の経営がギリギリなのは知っていたが、いや、借金があることくらい知っていたけれど。
だからって…こんなことになるまでだったなんて想像してもいなかった
こんなのあって良い訳がない。許される話な訳がない。
嘘だ。なんで…
「ハハ、あは、は…っはは…」
ここまで来ると笑えるじゃないか。好きな女が誕生日に消えるなんてとんだ笑い話ではないか。
一人笑って道路に蹲り、一人泣いた。
本当なんだ…事実なんだ。
まるであの日みたいだ。実母が消えたあの日。ろくに覚えてなんかないのは…姉ちゃんが居たから。
あの時支えになった姉ちゃんが、居ないなんて――



