白は花嫁の色


「っ、ふ…ざっけんな言えよ!!どこだよ!!誰だよ!?連れて帰れって…!!姉ちゃんっ、返してくれよ!?なあっ…」

言葉の勢いの割に、胸倉を掴む手がどんどん弱まる。

腑抜けの父さんを前に、何にしがみつけばいいのか分からないではないか。

大事な娘だ。血の繋がった可愛い娘だ。なに手放してんだよ?!

――震える手は間抜けだ。

パプリカの黄、赤、水菜やレタスの緑、大根や豆腐の白、オリーブの黒、カラフルなサラダの意味を考えて欲しい。


「金持ちの男だ。裕福な生活ができる場所に居る。忍は婚約を了承したんだ、今更なにも…」



婚約、を……了承、した……姉ちゃん、が?


目がおかしい。目の前の色がない、灰色のぼやぼや…何がサラダか何がケーキかさっぱりだ。


なぜ…?

この状況を、すべてを、認めたくない。

衝動的に紙袋を手にし、家を飛び出していた。

足の力になるのは動揺という言葉、震える膝を叱咤し夜の闇に向かった。