仕事場まで送ると必ず言われるこのセリフ。
「気分転換がしたいんだ」……これは俺の常套句。
受験生……なんとなく、もう、未来が見えてくる。
そんな迷う年齢な俺だから、「姉ちゃん、俺高校行かずに働きたいんだ」と言った。
けれど姉ちゃんは、「学歴が持てるなら持ったほうがいいよ。不況なんだし就職がままならないよ?」と、少し怒った口調で言う。
母親のような――
「でも姉ちゃんも中卒だか「お姉ちゃんはいいの、勉強苦手だったから正直ラッキーなんだ。
あ、その代わり雅県立だよ?私立はムリだよ特待生でも。
お姉ちゃんね?聞いて?
雅頭良いから絶対絶対受験頑張ってほしいんだ。
弟が高校に行ったとかバイト先で自慢できるし!」
―――勉強が苦手だったからと、にっこりと笑う笑顔を……本物だと思えたなら。
――結果として勉強が苦手なだけで、それは家事に追われていたから、
勉強に手が回らなかったという事実なだけなのに。
「……そっか、分かった、」
だけど姉ちゃんが言うなら、なんでも正しいから。
だから俺は頷いて見せた。
これから先もいつまでも、姉ちゃんが言うことに、ただただ頷いていたい。
そんな聞き分けのいい奴で居たい。



