「な、ん、なにが?」
噛んで吃って、動揺せずにはいられない。おかしなことを父さんは今言ったのだ。
意味が、わからない…眉間にはシワを刻み放題になっている。
「忍は婚約したんだ。帰って来ない」
「―――――……こ?ん? ―――、婚、約?」
婚約って…
婚約、だよな …?
恋人が結婚しようねと約束をする…それが婚約。未来の約束。
―――婚約?
誰が誰と、疑問ばかりが頭ん中を支配する。焦りとは裏腹に冷静な自分が居て――
「ああ、取引先の息子だ」
何でもないかのような口調で淡々と告げる。感情の読めない機械アナウンスみたいだ。
「っそれ、つま、り…」
働かない頭を必死に働かせて、意味を理解しようとして、だけど―――目の前が真っ黒だ。
日本語が理解出来なくなったのだろうか、いいやそんなことはない。
国語のテストは九十点台を常にキープしているのだから。
婚約の意味くらい分かる。王子様になった俺の未来にある言葉。



