けれど、時計は回る。右に右にグルグルと針が回る。


「なあ姉ちゃん六時っつったったよな??俺」

勘違いだったのだろうかと椿に尋ねるも、「六時って言ってたよ」と頷かれてしまえば、

妙に気持ちばかりが焦る。

「…だよ、な」

…もう七時過ぎだ。一時間も遅れるなんておかしいだろう。

…変だな。
姉ちゃんは時間は守るタイプなのに。なにかあったのだろうか。

春の七時は明るいとは言え、年頃の女の子だし、――何より姉ちゃんは他の子よりも特別可愛いので心配になる。

灰色の中にキラキラした粒が混ざった砂壁は、爪痕で凹んでいる。


無意識にプレゼントを握り締めた。幸せのつまったお姫様のアクセサリー。

「冷めちゃうよ」「お腹減ったよ」

駄々を捏ね出した下二人を怒ろうとしたら、「今日は姉ちゃんの誕生日だからダメ!」と椿が注意し、

ああ、しっかりしてるなあと、しんみりと思った。

少しづつお姉さんに成長するのだろう。椿が大きくなれば姉ちゃんもいくらか楽になるだろう。



…でも、遅い。

迎えに行こうか、過保護な親のようなことを考えていたら――

ガチャっとカギの回す音がして、




「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」


毎日練習を重ねた幼稚園児のお遊戯会のように、四人一斉に言った。