白は花嫁の色


バカみたいに満腹まで食べられる余裕がないので、早々に飯を食い終わる。


宿題をする為に部屋にこもってしばらくすれば、「じゃあ行って来るね」という声がして、

慌てて俺は「待って」と言い玄関に急ぐ。

―――九時三十五分。



一つ上の姉は、中三の俺、小六の妹、小二の妹、小一の弟と、父さんという大家族貧乏一家を支える為に、高校に行かなかった。


昼すぎに起きて家事や買い物をし、晩飯作って兄弟の世話して、

夜十時から朝の五時まで流れ作業の工場で働いている。(夜間の労働は禁止されているが大人の事情だ)

そして帰宅したら風呂に入って家族の朝飯作って、洗濯物干してあれこれ家事を済ませてから寝る。

そんな生活サイクルだ。


……そう、分かるだろう。

ただただ自分を犠牲にしているんだ。優しい姉ちゃんは自らその生活を選んだ。



人気のない道を二人で歩く。さびれた町だから外灯の間隔が長い。

だから夜を感じるには適した通りだ。しっとりとした風がまつ毛を撫でる。

二人だけだと錯覚できる星の下、恋人たちには良い道かもしれない。



「いいのに、ほんと、勉強してたでしょ」