白は花嫁の色

――

早起きをした。

今日は特別な日。
好きな女の誕生日。

一番好きな服を着て、黒い髪を綺麗にセットした。朝ご飯を食べた。


実は茜に目玉焼きを食べられたと喚き、椿はいけないでしょと茜を叩く。
この騒がしさにいつまでも包まれていたいから…


「こーら、喧嘩しないで」と姉ちゃんは手を叩き頬を膨らます。

――のどかだな、と眺めて。誕生日ってだけで幸せを実感できるんだ。


「雅もちゃんと叱ってよ?」

「あ、うん。ははっ、こーらって?ははは」

左手で目玉焼きに醤油を足らしながら、ちらりと今日の主役を見た。

十六歳の姉ちゃんは真っ白のすとんとしたワンピースを着ている。

それは余所行きの時にしか着ないワンピース。バスケの試合に誘った時に着ていたワンピース。


「なんだよ姉ちゃんおしゃれして、主役だから?気合い入れた?」

可愛い姉ちゃんにニコニコして尋ねたのに、姉ちゃんは固い笑顔だ。




返事をせずに、「じゃあ私行って来るね」と、姉ちゃんはドアに手をかける。

「え?どっか行くの?」

デートかな、なんて漠然と思った。

変な寒気がした。嫌な予感っつーの?根拠のない悪寒。

黒い醤油が白に飛び散っている。