「忍、お誕生日おめでとう」
「え…?、あ、本当、今日だ、あはは」
「お誕生日おめでとう」
多分姉ちゃんはにっこりと笑っているんだろうけど、暗くてあまり感情が見えない。
ありがとうと言う声は震えている?
……気のせい、だよな?
元気に、なって欲しい。
「…十六だね、結婚できる」
いつものようにおどけて言ったのに、姉ちゃんは暗闇の中、曖昧に笑うばかりで。
?
「…雅、お姉ちゃん……心配しないでいいからね。全然。
雅洗濯できる?料理できる?もうお兄ちゃんなんだから出来るよね?」
「…そりゃ、できる、よ?」
姉ちゃんの目は丸い。
優しそうな瞳が見ている未来は……
考えたくはない。
すっと俺に伸ばされた手を、ためらいなく握った。捕まえておかなきゃと思ったからだ。
「おやすみ」
「おやすみ、おめでとう」
そっと姉ちゃんは目を閉じて…
――今なら姉ちゃんの気持ちが分かったのに、この時の俺はガキで、
明日姉ちゃんにあげるプレゼントで頭いっぱいで、姉ちゃんの気持ちなんか見てもなかったんだ。
――後悔しても遅い、後悔する前に気付くことが大事なのに。
だけど、この時の俺は気付けなかった、完璧に見落としていたんだ―――



